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ヘル・イレイザー 
まんだらけミクロ館館長の宮越氏をして「先を行き過ぎている漢」と評される人物。ご自身曰く幼い頃からコレクター気質を有しており、そのコレクションは多岐に渡る。長年の経験から来る知識はホビー全般に通じ、年代を問わず一定以上の見解を持ち合わせる。インタビューを通じて感じたのは「達観した見識眼」。淀み無く語られる言葉には充分な説得力があり、考えさせられる場面もしばしば。消しゴム専門通販サイトれっくといずの客分としても知られており、その豊富な知識量から、ホビー雑誌などの各種メディアへの露出経験も多数ある。
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我々はマラソンの途中
駄玩具への愛 

邪道:
今回は企画へご協力頂き、誠にありがとうございます。
ヘル:
とんでも無いです。面白い話ができるといいですけど。
邪道:
自己紹介をして頂けますか。
ヘル:
ヘル・イレイザーと名乗っています。今はREC★TOYSという消しゴム専門通販サイトの手伝いなんかもしてます。 基本的には根っからのコレクターですね。
邪道:
色々集めてらっしゃると伺っていますが、コレクションの範囲はどの辺なんですか?
ヘル:
ここからココまでという範囲を限定するのは難しいですね。消しゴムについては王道は任せた!っていう気持ちがあります。
邪道:
と、いいますと?
ヘル:
キン消しやガン消しなどに代表される王道のモノってもちろんコレクションとして持ってますけど、今追い求める対象っていう感じではないですね。
邪道:
王道は他のコレクターに任せて、ご自身はあまり他の方が触れないジャンルを進もうと。
ヘル:
僕は何かにつけコクを求めるタイプなんで(笑) 造型一つとってもちょっと笑ってしまうような、アクセントのあるヤツ。そういう物を求めています。
邪道:
分かるような気がします(笑)
ヘル:
食玩なども同じような傾向で集めています。
邪道:
具体的にはどういったところでしょうか?
ヘル:
有名なところで言えばロッテのジョイントロボなんか良いですね。僕はああいうのを「地域密着型玩具」と呼んでるです。超合金とかって当時高嶺の花な玩具だったんですよね。 そういう物じゃなくて、もっと身近にあった、スーパーの買い物に一緒について行って、ついでに一個買ってもらえるような物。

※ジョイントロボ
70年代後半から90年代初頭の長きに渡りシリーズが続いたロッテの食玩。50円のジョイントロボと、100円スーパージョイントロボがあり、いずれもコレクションアイテムとして人気が高い。
邪道:
今でこそ大人でも食玩を買いますが、昔は確かに子供にとって身近な存在でしたね。
ヘル:
やっぱり身近にあった物ほど、当時の記憶を想起させる部分ってありますよね。 超合金などももちろん否定はしませんけど、もっと肌に実感として残ってる部分。 それが食玩に代表される駄玩具であり、地域密着型の玩具かなぁと。
邪道:
コレクションの守備範囲として考えるととても広いですね。
ヘル:
やっぱりコレクションの範囲って限定は難しいですね(笑) 要は玩具全般好きなんですよ。その中でも今は駄玩具がメインになる感じで。
邪道:
駄玩具への愛を感じます。食玩・駄玩具の魅力ってなんでしょう?
ヘル:
超合金なんかに比べてまだまだ発掘的な要素があるのも面白いですよね。 当時を体験しているはずなのに、存在すらまったく知らない食玩があったり。 その頃ってホントに星の数ほど食玩がリリースされてて、全容が把握されてないじゃないですか。 超合金などの代表的なコレクタブル玩具はマニュアル本が出版されるぐらい解明されてるわけで。 でも食玩・駄玩具にはおそらくまだたくさんの未知の部分が残っている。 そこに魅力を感じます。


左:ジョイントロボ
「コスモライガーシリーズ」

右:スーパージョイントロボ
「ロボキッズシリーズ」
超合金から消しゴムへ 

邪道:
消しゴムを集めるに至った経緯を教えてください。
ヘル:
僕が消しゴム集めるキッカケって「宇宙船」だったんですよ。

※宇宙船
1980年から2005年まで朝日ソノラマより発行されていたホビー雑誌。国内外の特撮に関する情報や玩具情報を軸として人気を博した。一時休刊されたが、2007年にホビージャパンが商標と編集権を取得し2008年より正式に復刊。現在も継続中。
邪道:
ホビー雑誌ですね。
ヘル:
その雑誌の中で「けしゴム探偵団」っていうコーナーがあったんです。
邪道:
それは初耳です。どういった内容だったんですか?
ヘル:
怪獣消しゴムが中心の内容でした。そこでマイナー消しゴムっていうジャンルに初めてスポットが当たったって思ってるんですけど、4回ぐらい連続で掲載されたのかな。90年代初頭ぐらいの話ですね。 その頃は超合金とかをやってたんですけど、なんせ保管に場所をとるんですよね。 しかも超合金がピークだった時期でもあるんで、住宅事情と経済事情でもう厳しいなぁって。

※怪獣消しゴム
ポピー、丸越、山勝などのメーカーが発売していたウルトラ怪獣の消しゴムの総称。コレクタブルアイテムとしての消しゴムの先駆け的存在。
邪道:
そんな時に消しゴムに出会った。と。
ヘル:
元々小さい物が好きだったのもあって、集めだしたんです。 それ以前の超合金を集めてた時っていうのは、実は消しゴムって忌み嫌う物だったんですよ。 超合金に消しゴムが付属している場合があって、塩ビは材質的に発泡スチロールを溶かすんですよね。 自分の中でそうやって嫌っていた消しゴムと超合金の立場が、まさか入れ替わるとは思ってませんでした(笑)
邪道:
その頃の消しゴムというジャンルは、コレクタブルアイテムとしてどうだったんでしょう。
ヘル:
こう言ってはなんですけど、正直ゴミ扱いでしたよ(苦笑) 古玩具屋と呼ばれる店舗に行っても、ダンボール箱にドサッと入って床にボーンって放置されてる感じで。 一個10円とかでしたね。
邪道:
安い!(笑)
ヘル:
むしろ値段があるのは良いほうで、まとめて買うって言ってやっと値段がついたり。 まともに値段がついてる他のおもちゃを買って、オマケでもらったり。
だからトレードなんかすると変人扱いでした。 当時超合金を提供して、消しゴムを希望する人なんて皆無だったんですよ。 「頭おかしいんじゃないの?」って言われるぐらいで(笑) そんな状況もあってその頃はバンバン手に入ってましたよ。 種類問わずダンボール何個なんて単位でトレードした事もあったし。
邪道:
今の感覚からするとすごい光景ですね(笑)
ヘル:
その頃はまだヤフオクなんて物も無かったし、交流って言えばホビージャパンの「売ります買います」ぐらいで。
邪道:
利用した事はありませんが、見たことあります。
ヘル:
あそこが唯一の交流の場所っていう感じで、普通に文通みたいにしてましたよ。どれだけやっただろう? 今でも何も考えないでもその当時書いてた定型文は書けますよ。手紙の文頭文末に書くような(笑) 切手同封とかお約束みたいなのもあったし。 そんな感じでゴツゴツ集めてました。
邪道:
他に入手経路は無かったですか?
ヘル:
TOY系のイベントなんかも行ってました。それこそスーパーフェスティバルとか1回目こそ行ってないけど、初期開催の頃から行ってたんじゃないかな。消しゴムはとにかく安かった(笑) その頃は消しゴムに対して価値を見出してる人が本当に少なかったんです。買い手も売り手も。 だから何も知らないのに未開封カプセル一個500円とかつけてる人を見ると「えー?!?」って感じでした。

※スーパーフェスティバル
株式会社アート・ストーム主催による玩具の展示・即売イベント。1992年に第一回が開催され、2009年9月に第五十回を迎える。各種玩具メーカーや個人ディーラーが多く集まり、毎回数千人規模の来場者数を誇る。
邪道:
500円は高い?
ヘル:
当時にすればそりゃぁ高い(笑) ホンの一部のコレクターの間では一応「レアな消しゴム」っていう概念は存在してて、分かってる人は一個500円とか1000円とかで売り買いしてたけど、僕は買わなかった。探せばまだまだあったし。 今思えば全部買っておけば!って思うんですけどね(笑)
邪道:
ホント思いますよね。僕も集め始めた頃にガン消しのファイナルフォーミュラーとか500円ぐらいで売ってたのに遭遇してて、すでに持ってたんですけど、未開封っていうのに惹かれて迷った挙句に買ったんですよ。 今なら迷う間も無く脊髄反射で買いますよね!(笑)
ヘル:
僕が始めた頃っていうのは怪獣消しゴムですらそんな感じだったから、キン消し、ガン消しなんてもっとヒドイ扱いでしたよ。 なんせまだ新しい玩具に分類されるモノだったから。
邪道:
今でいうところのSDガンダムフルカラーとかHGに似た感じでしょうか。
ヘル:
ホントそんな感じですね。コレクターとしては良い時代でした(笑)



上記にあった雑誌「宇宙船」の「けしゴム探偵団」のページ。Vol.56〜59の4号連続で掲載されている。

消しゴムの知名度とこれから 

ヘル:
怪獣消しゴム集めだした頃にはまだ現役で超闘士とかベンダーに入ってましたよ。 超闘士についてはあまり知らなかったんですけど、興味本位で回してみて出てきたのがメフィラス二世で。 「なんて渋いチョイスんだろう!」って思いました。

※超闘士
正式名称は「ウルトラマン超闘士激伝」。コミックボンボンで漫画が連載され、バンダイからガシャポンが発売された。ディフォルメされたウルトラマンや怪獣が装鉄鋼(メタルブレスト)と呼ばれる武器を装備し闘う内容。
邪道:
超闘士ってさりげなくすごいラインナップですよね。
ヘル:
実は超闘士ってポピーの怪獣でリリースされていないところを選んで出してる感じがあるんですよ。 たぶんなんですけど、企画者側の遊び心なんじゃないかと。
邪道:
確かにそうかもしれないですね。超闘士ってプラパーツを外すとちゃんと怪獣だったりウルトラマンになりますよね。 そういうところも加味されての構成だったのかも。
ヘル:
そうですね。だから早い段階からポピー怪獣消しゴムのコレクターの間でも超闘士っていうのは結構評価されてましたよ。 渋いチョイスのところは尚のことでしたね。
邪道:
超闘士は今でこそあまり評価されていませんけど、バンダイのガシャポンとしては結構長生きしたシリーズなんですよね。
ヘル:
そうそう。キン消しとかガン消しに比べたら短いけど、あっちの方がむしろ異様に長かっただけで、超闘士だって10弾を超えてリリースされてるから。

※バンダイ製に限らず、当時の無彩色塩ビのシリーズ物で、弾数が10回を超えるシリーズはあまり無い。数回、もしくは単発で終わってしまう事の方が多かった。
邪道:
キン消しがパート30まで、ガン消しに至ってはどれだけあることやら。
ヘル:
ガン消しは多いですよね。
邪道:
本弾だけでパート50を超えてて、単独弾や外伝、ガンドランダーまで入れたら一体どれだけあるんでしょう? でも、残念ながら知名度においてガン消しはキン消しを超えられない…
ヘル:
確かに。「キン消し」っていう言葉に全てが集約されてますね。 そこら辺を歩いてる人に聞いてもたぶんキン消しって言葉は知ってるでしょう。
邪道:
超えられない壁がありますよね。
ヘル:
でもポータルサイトの検索キーワードの上位にガンダムって言葉は入ってるんですよね。 ガンダムっていうシリーズはこれからも続くわけで、そういう点ではSDガンダムだってまだまだ伸びる余地のある分野だと思いますよ。ガン消しっていうコレクタブルアイテムも含めて。

※2008年のYahooのアニメ・ゲーム検索ワードランキングでは「ガンダムOO」が5位、「機動戦士ガンダム」が7位という結果が出ている。
邪道:
確かに私が普段接する機会のあるSDガンダムファンの方は、すごく若いですね。20代前半とか。 そういった方々を見ると今後10年とかは全然平気かなって思います。20年30年になると分かりませんけど(笑)
ヘル:
大丈夫なんじゃないかな? 僕が消しゴム始めた頃から考えるともう20年ぐらいになるけど、そろそろ下がるだろう。そろそろ下火になるだろうって思い続けて、今に至るんですから。 下火になるどころかむしろ盛り上がってるぐらいですよね。現状って。
邪道:
そう考えると、まだまだ続くのかもしれないですね。
ヘル:
超合金なんかは一時期に比べれば落ち着いた感じはあるけど、まだまだ値段がつくものはつくし、ブリキなんかは骨董的な視点で見られている側面すらありますよね。
邪道:
個人的には消しゴムがそこまで昇華できるのか?という疑問はあります。
ヘル:
でも骨董の世界で何が高いってそういう小物だったりしますよね。日本の住宅事情に合った嗜好っていうのが昔から確立されているように思います。 そういった意味では消しゴムっていうのはコレクションアイテムとして、日本人の気質にあった物なんじゃないかな。
コレクションはマラソンのようなモノ 

邪道:
そういえば怪獣消しゴム等はちゃんとサイト構えてる人ってあまりいないですよね。
ヘル:
僕らなんかより年齢が上になっちゃうんですよね。だから技術的な問題もそうだし、やっぱり生活があるんじゃないですかね(笑) ある程度上の方となると、純粋なコレクター魂だけだとハードルが高いのかもしれないですね。 でも若いコレクターもいるはずなので、その辺は越えるべきハードルだとは思いますよ。
邪道:
対象物は何にせよ僕のイメージするコレクターって、30代前後である程度時間とお金が自由になる人が中心だと思ってるんです。 そういう方々ってあまりおもてに出てこないイメージがありますね。
ヘル:
うーん。独占欲みたいな物があるのかも知れないですね。 情報を共有するっていう概念が希薄なように思います。
邪道:
確かにそういう風潮はありますね。
ヘル:
情報を開示するっていう事に対してちょっと抵抗があるんでしょう。 確かに情報ってある意味では"力"ですよ。正式な商品タイトルを知っているのと知らないのとでは雲泥の差。 知らなければオークションに出品されてても検索のしようが無い。ネット検索しようにも同じですよね。
邪道:
僕もコレクションを始めた当初に同じような経験をしました。それでちょっと閉鎖的な空間なんだなって肌で感じましたね。 でも、同時にそれってちょっとツマらないなとも感じたので、僕が持ってる情報は全部出しちゃえ!って思ってサイト始めました。もちろん中には大人の事情で出せない情報もありますけど(笑)
ヘル:
誰かがそうやっていかないと、コレクターの底辺は広がらないんですよね。 狭い範囲の中だけでやっていても先細ってしまうのは目に見えていますから。
邪道:
そういった意味では、ネット上にれっくといずのような消しゴム専門店があるっていうのは、とても有意義だと思います。
ヘル:
恐縮です。
邪道:
様々聞いてきましたが、最後に一つ。収集を長く続けるコツみたいな物はありますか?
ヘル:
僕の考え方の根底に「くだらない物集めてるよな」っていう感覚があるんです。
誤解の無いように言いますけど、好き故の褒め言葉として「所詮は消しゴム」って思います。 ガツガツ集めるのもコレクターの個性として否定はしないし、むしろそれが正しい姿かもと思いますけど、もっと悠然としてもいいんじゃないかな?って。 コレクションってマラソンみたいなモノで持久力が大事でしょう? 「継続は力」って言葉が表すのはそういう事だと思うんです。
邪道:
締めに相応しい先輩コレクターのご意見として深く胸に刻ませて頂きます!
ヘル:
そうは言っても「コレが欲しい」っていう欲求は中々抑えられないですけどね(笑)
邪道:
個人的に大変耳が痛い部分ですね(苦笑)
ありがとうございました!
 

2009.05.31