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Guest:秋葉 勝教 
東京・巣鴨にある和物絶版玩具専門店フォレスト玩具の店長。店を構えて14年、その時々においてレア、幻と言われた超合金やソフビを数多く発掘し世に流した。その手腕は今なお健在で、近年においては消しゴムの発掘も手掛け、中古が当たり前の市場の中で、新品にこだわって販売を続ける稀有な存在。
外見こそ強面だが、非常に気さくな人柄が多くの顧客を抱える要因である事は間違いない。また、格闘技にも精通しており、レスラー、プロ格闘家などとの交友も深い。こういった人脈の広さがその人柄を如実に表している。

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時代と共に変わるモノ
最後のコレクションアイテム 

邪道:
今回は企画へのご協力ありがとうございます。 色々とお話を聞かせてください。
この商売を始めて何年になりますか?
秋葉:
14年になるかな。
邪道:
現在取扱われている玩具は数限りなくありますが、始めた当初の中心は何ですか?
秋葉:
僕はマルサン・ブルマァク怪獣ソフビ、ヒーローソフビと超合金。この三つが専門。だから当時の中心もこの三つ。 そこが自分の好きなカテゴリーで、それは今でも変わってないよ。 店で扱うカテゴリーは増えたけどね。

※マルサン・ブルマァク怪獣ソフビ
60〜70年代に両社より生産販売されたソフビ怪獣人形。超合金と並びプレミア玩具の代表格。


※ヒーローソフビ
ここで言われるヒーローソフビとは、怪獣ソフビとほぼ同時期に発売されていた仮面ライダー、戦隊物等のソフビ人形。

邪道:
お店を始めた当初の状況はどのような感じでしたか?
秋葉:
その頃の景気とかもあるけど、店自体は最初からある程度軌道には乗ってたね。 僕は元々コレクターだったから、相場観もある程度あったし、色々と人脈もあった。 だから売りに来てくれる人が結構いて、買取が凄かったかな。
玩具雑誌を初めとしてあらゆる媒体に広告載せてたしね。 毎日のように買取が来たし、入ってきた分売れる。その繰り返しで寝る間も惜しんでやってたよ。 店にダンボール引いて寝るなんて当たり前だったから、肉体的にも経済的にも体力が無いとやれなかったと思う。
邪道:
大変な時期だったんですね。
秋葉:
やっぱり超合金、ソフビ人形なんかが中心なんだけど、出る時はもの凄い量が出てきてね。
邪道:
どういった筋からの出物が多かったですか?
秋葉:
大量に出る時っていうのは問屋筋が多かったかな。
邪道:
まだ問屋の倉庫なんかにデッドストックが眠っていたという事ですか。
秋葉:
70年代を中心にその前後の玩具って90年代半ばぐらいまで、まだ何とか発掘できたんだよ。 僕の扱ってる商品の中心はまさにそこ。ブリキなんかは業界の先輩方がやってたし、そもそもあまり興味なかった。
だからこっちは周りがまだ本腰を入れていなかった超合金に目をつけたわけ。

※デッドストック
売れ残り品などで長期間倉庫などに保管されていた商品の総称。デッドストックに限らずプレミア商品を倉庫などから探し当てる行為を発掘ともいう。


※ブリキ玩具
1940年代頃まで玩具の中心だったブリキ玩具。年代ものであり、種類も豊富な事からコレクターズアイテムとして今でも一定の人気を保っている。
邪道:
先見の明ですね。
秋葉:
70年代玩具もそうだけど、80年代玩具も周りの人に比べて参入したのは早かったと思うよ。
邪道:
そういったスタンスの変更に抵抗はありませんでしたか?
秋葉:
時代の移り変わりと共にコレクターが変化するのは当たり前の話で、そこについていってこその商売だと思う。 自分の興味とか、好きなカテゴリーっていうのは今でも変わらないけど、お客さんが求める物は、コレクターの年齢層が変われば当然変わるしね。
今の20代30代の人がブリキの玩具を買うかって言ったら買わないでしょ。そういう事だね。 でもこの辺が限界かな? って最近思う。
邪道:
もう追いきれないですか。
秋葉:
僕自身がね。これからも現行の玩具が懐かしいっていう世代はもちろん出てくるんだろうけど、その時代までは僕がもたないでしょう。その辺は後進に任せるよ(笑)
だから今扱ってる商品、80年代から90年代初頭ぐらいまでがギリギリかな。 その華になるのはカプセル玩具だと思ってる。
邪道:
カプセル玩具に注目される理由はなんでしょうか?
秋葉:
重要なのはコレクション性。タイトルは多いし、ラインナップも豊富。その辺は他の玩具に勝る魅力だと思う。それに通常の玩具に比べて小さいのがいい。まさに20世紀最後と言うに相応しいコレクションアイテムだよね。
邪道:
確かに数多く集めてもそれほど収納場所に困りませんね。
秋葉:
店としては在庫をたくさん抱えても倉庫のスペースをあまり喰わないのが素晴らしいよ(笑)
邪道:
超合金などに比べればスペースをくわないかも知れないですね
秋葉:
在庫をたくさん抱えても倉庫のスペースをあまり侵食しないんだよね(笑)

2009年6月の店舗風景
撮影日は買取直後で、とんでもない量の超合金の山が築かれていた。画像はその買取分のごく一部。
量だけでなく内容的にもマニア垂涎の品ばかりで、デッドストック品が多かった。
恐れ入りました。

消しゴムへのシフト 

邪道:
カプセル玩具っていうと消しゴムが中心だと思うんですが、消しゴムを扱い始めてどれぐらいになりますか?
秋葉:
10年ぐらいかな。
邪道:
もう6〜7年前になりますが、私も店舗でSD北斗の拳のユリアを買った覚えがあります。
秋葉:
それぐらいにはもう入れてたね。まだ中心とは言えなかったけど。
邪道:
よく覚えてます。ショーケースにズラッとSD系の消しゴムが並んでたんですよ。 そこにユリアの緑色があって「これの肌色無いですか?」って店員さんに聞いたら出してくれたんです。 あの時は嬉しかったなぁ。
秋葉:
ミノワマンが来てたのもそれぐらいかな?もうちょっと前か。
邪道:
美濃輪育久選手ですか?

※ミノワマン
プロレスラーの美濃輪育久選手。06年にミノワマンに改名。ニックネームは「ザ・リアル・プロレスラー」。総合格闘家と書くべきなのだろうが、ミノワマンにはレスラーの称号こそが相応しい。
秋葉:
うん。まだデビュー前に来ててね。彼はその頃からキン消しキン消しって言ってたよ(笑)
邪道:
キン肉マンが大好きなんですよね。なんせミノワマンを名乗るぐらいですから。
秋葉:
その頃に超人全鑑を発掘したんだよ。それをミノワマンが買ってくれた。 未開封のデッドストックだったから、今考えるといい買い物だったね。

※超人全鑑
パート1からパート13までの肌色キン消し205種をセット販売した商品。キン消しコレクター垂涎の一品。
邪道:
超人全鑑のデッドストックって今だと考えられないですね。
秋葉:
6個入ってて全部シュリンクすら破いてない店頭に出してもない新品。 当時で3万つけてたけど、すぐ無くなったな。
さっきも言ったけど、まだまだ問屋筋には品物が残ってた時代だからね。 消しゴムに限らず日本全国お声が掛かれば、どこにでもスッ飛んで行った。 消しゴムを本格的に商品として見始めたのは、超人全鑑がキッカケって所もあるんだよね。
ミノワマンが熱心にキン消しキン消し言ってるもんだから、これは「来るな」って思った。そこからは早かったよ。 取引のある玩具問屋に電話しまくってね。キン消しのカプセル入りのデッドストック持ってる所探してもらって。
それが功を奏して結構在庫のあるところが見つかってね。ある分は全部くれって。 そしたら大変だよ。軽トラ満タンっていう単位で届くんだもん(笑)
邪道:
話のケタが違う(笑) 価格的にはどれぐらいでしたか?
秋葉:
多いときは100万とかかな。
邪道:
やっぱりケタが…
秋葉:
でもまだ当時は仕込み段階って意味もあったし、未だに捌ききれないのもあったりするよ。 消しゴム以外のミニプラとか。
邪道:
ダメなのはダメですよね。
秋葉:
鬼太郎の水鉄砲とかね(笑)
邪道:
そうなると消しゴムはキン消しの勉強から始まったんですか?
秋葉:
すでにキン消しが全418種っていうのは知識として持っていたから、とにかく後半弾を押さえようとした。
邪道:
シリーズの最初期か最後期っていうのは玩具道の基本ですよね(笑)

※玩具であれ何であれコレクション性のあるシリーズ物は最初期か最後期にプレミアが付くことが多いとされる。キン消しの場合、出荷数自体がかなり少ないと言われる最後期にプレミアが集中している。
秋葉:
でも墓穴掘った面もあるんだ。なんせ「パート28、29、30の辺りを!」って言いすぎてね。 仕入れ先に知識をつけさせちゃった。そしたら仕入れ価格も上げざるを得ないし。ちょっと慌てちゃったんだね。
邪道:
でもその甲斐あって後半の仕入れに成功したんですよね?
秋葉:
まず最初に入ったのはパート28と30で、ちょっと間をおいて最後に29が出た。一気に4袋も。

※パート30まで発売されたキン消しの中で、特に珍重されるのは最後期にあたるパート29と30。キン消しをコレクトする上で最難関といわれている。
邪道:
単純計算で約500個ですね!

※キン消し、ガン消しなどのカプセル玩具は一袋120個が1単位とされる。
秋葉:
その後も何回か出してるけど、29があれほど大量に出てきたのは最初で最後かな。 でもアソートは厳しかった。500個あっても肌色で全種が組めたのは2セットだけ。もしかしたら肌色だけ抜かれてたのかもね。
邪道:
今でこそ30の方が珍しいって感じですけど、数年前までは29の方が珍重されてましたね。
秋葉:
29に関しては僕が安定供給させすぎちゃったっていうのもあるんじゃないかな(笑)
邪道:
当時のコレクターに行き渡ったんでしょう。
秋葉:
そうだと思う。価格は安定させてたし数もあったし。 30は29ほど数が出なかったから、今では逆転しちゃったみたいだけど。
邪道:
まさに市場を創造した瞬間ですね(笑)

ガシャポン店舗在庫の一部
デッドストックの袋がそこかしこにあり、現在も開封整理作業が進んでいる。
右のダンボールの中にはキン消し、ガン消しなどのミニブックが収められていた。数百枚ではきかない枚数で、大量という言葉以外に表現のしようが無い。

80年代ブームと消しゴムと 

邪道:
キン消しの流れを受けて、いよいよガン消しの出番ですね。
秋葉:
キン消しからは少し遅れたけど、ガン消しもかなり出したと思う。
邪道:
最近のガン消しの発掘率は相当高いですよ。
秋葉:
ここ数年は特に顕著だよね。
邪道:
本弾、外伝、ガンドランダー、SDRまで発掘されましたね。
秋葉:
でも入れすぎて不良在庫になるかな?って事もあったよ。SDRとか結構な数が入ってたから。 その頃のSDRは人気が無くてセットでもあまり値段つけられなかったけど、今ではその在庫も風前の灯。(笑)
邪道:
秋葉さんが結構な量っていうからには100個や200個じゃないですよね?
秋葉:
正直100とか200なんてすぐ無くなるよ。全国のお客さんが相手だとなおさら。 その時期に人気が無くても、ある程度寝かせると爆発的に売れたりもする。SDRはその典型だったね。
邪道:
キン肉マンとガンダムはタイトルとしてどっちが強いんでしょう? 消しゴム的にはどうですか?
秋葉:
少し前まではやっぱりキン消しだった。 でも今は非常にいい勝負。むしろガン消しの方が少し抜けたかな?っていう印象があるよ。 種類が多いっていうのはコレクションアイテムとしては強みだよね。ガンダムっていうタイトル自体もやっぱり強い。
邪道:
ガン消しコレクターには嬉しいお話です。
秋葉:
キン消しはある程度相場が決まってるけど、ガン消しはまだまだ不安定かな。 そういう意味ではキン消しは気合入ってるコレクターが多いんだよね。高い物ほどよく売れる。 逆にガン消しは細かいところもよく売れるし、高いところももちろん売れる。 コレクター人口で考えるとガン消しも相当なもんだと思うな。
邪道:
SDガンダムが好きっていう人は結構いるんですよね。それに今またブームになりつつあります。
秋葉:
最近SDガンダムってよく聞くよ。
邪道:
昔のBB戦士の再販、三国伝やSDXなんていう新機軸も出てきて、再ブームの兆候が見えます。 その中で今回ガン消しが復刻となりました。
秋葉:
願ったり叶ったりだよね。
邪道:
秋葉さんのお立場として復刻に対する不安とかないですか?
秋葉:
いやいや。キン消しも復刻されたでしょう。 あの時も「これから大変ですね」なんて心配してくれる人もいたんだけど、僕としては歓迎できる動きだよ。
邪道:
といいますと?
秋葉:
復刻物と当時物とは完全に差別されるから。キン消しが良い例で29とか30も復刻されてるけど、結局殆ど影響は無かったし。 むしろ当時物を欲しがる人が出てくるぐらいだからね。裾野が広がるっていう意味では歓迎だよね。 結局当時物には当時物の魅力っていうのがあるんだよ。それは復刻されようが変わらない。そういう事でしょう。
邪道:
今古玩具の世界では80年代がブームだと思います。この流れは続くと思いますか?
秋葉:
やっぱりコレクターの中心っていうのは、いつの時代も30代前半ぐらいの人なんだよね。 その辺の年代の人が懐かしがる物にプレミアがついてくる。 だから今80年代が盛り上がってるっていう側面はあるよね。 もう少しの間は続くんじゃないかな?
5年とか10年とか。
邪道:
60年、70年代のレトロ玩具は正直かなり落ち着いてきましたよね。
秋葉:
高い物はまだまだ高いんだけどね。 でも、当時ある程度たくさん作られた物はなんだかんだ言っても出てくる。 80年代にたくさん作られた物と、それ以前にたくさん作られた物って、同じ「たくさん」と言ってもケタが違う。 そういう物はオークションなんかが発達してみると、結構出てくるんだよね。 昔は僕みたいな絶版玩具屋が発掘しないと出てこなかった物が、一般人にその価値が知れてくるとポンポンって出てきちゃう。
邪道:
なるほど。数が出てくれば需要と供給の関係が崩れますね。
秋葉:
そこに輪をかけるように60、70年代玩具コレクターの数が減少傾向にある。 結婚とか子供が出来るとかするとコレクターは卒業する事が多いから。 年代的にその頃のを集めてるコレクターって、殆どそういう時期に入ってるんだよね。 そこを何とか乗り切っても今度は子供が小学校にあがったり、中学校にあがったり。 そうなるともうお手上げだよ(笑)
邪道:
なんだかコレクター人生の縮図が見えてきた気がします(笑)
では、これからしばらく80年代中心ですか?
秋葉:
そうなるんじゃないかな。僕は消しゴムをまだまだ押すつもり。
邪道:
消しゴムコレクターとしては心強いお言葉です。
秋葉:
でも仕入先が先細って来てるんだよね(笑)
邪道:
ガン消しなんかも厳しくなってきてますか。
秋葉:
厳しい厳しい。最初の頃はそれこそ結構入ってきたけど、今では徐々に仕入れ値も上がってるしね。
邪道:
それでもやっぱり発掘は続けて欲しいです。
秋葉:
もちろん続けるよ! 新しい仕入れ先も常々探してるし、まだまだ出すつもりでいるよ。
邪道:
秋葉さんがそういうとホントに出してくるから凄いですよね(笑)
楽しいお話をありがとうございました!
 

2009.06.02